麺を究める日記

麺の探求がライフワーク

ベトナム戦記(開高健)

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開高健の戦争文学、ベトナム戦記を読む。
1990年に出版されたベトナム戦争ルポルタージュであります。
開高健先生の本は色々と読んだが、戦争文学は初めてです。
何故今戦争文学かと言うと、さして意味のある読書ではない。
3月の初めにベトナム出張があるものですから、基本情報を知ろうと言う魂胆です。
しかし、読んでみると流石に開高節が鏤められ引込まれてゆきます。
物を書くという事の難しさは、食べる表現と性描写だと言っていた師の戦争の表現は、流石に真髄を突いている文章が各所にある。
素晴らしい本です。

ある日、一匹のサソリが川へやってきた。川をわたろうと思ったがサソリは泳ぎを知らない。困ってあたりを探したら、草むらにカエルが一匹座っていた。背中に乗せて向こう岸へわたしてくれと頼み込んだら、カエルは、あんたはおいらを刺すからいやだよと断った。「バカだな、おまえ」サソリは笑った。
「おいらは泳げねえんだから、あんたを刺すはずがないじゃないか」
人のよいカエルはそういわれて考え直し、なるほどそういわれたらそうかも知れないと思い、サソリを乗せてやることにした。川をわたりはじめて真ん中あたりまでいったら、突然サソリがカエルをプツリと刺した。二人ともたちまち溺れ、死んでしまった。溺れながらカエルが水の中から悲しげに叫んだ。
「なんだってこんなことするんだ」
サソリが水の中から叫んだ。
「それが東南アジアなんだよ」

この文章から始まります。